アラ4オジサンの読書感想文「博士の愛した数式」
「ぼくの記憶は80分しかもたない」そんな数学博士と、家政婦とその息子の物語です。電話番号、靴のサイズ、野球場の座席番号、江夏の背番号・・・などなど、ありとあらゆる数字が数学者以外の一般人には知らなかった「友愛数」や「完全数」などで解説されていて、ストーリ以外にも新しい発見のある内容です。
記憶力に支障のある博士の言動にハラハラしながら読み進めるのが楽しいのですが、クライマックスは「駆け足」になってしまったのが残念です。もっと丁寧に書くか、いっそのこともっと早く切り上げるかにして欲しかったので少々残念でした。
でも、博士は80分の記憶を補うため、忘れてはならない事柄をメモし、そのメモを背広にクリップで留めているのですが・・・・・「毎朝、目が覚めて服を着るたび、博士は自分が患っている病を、自らが書いたメモによって宣告される。」この一文だけでも、この本を読んだ値打ちがありました。これまで認知症は「もう何も分からないから、分からないことも分からない」と勝手な解釈をしていましたが、もしかしたら「毎日、分からないことを悲しみ、絶望と向き合いながら生きているのかもしれない」と思いました。これからは、そのような悲しみや寂しさを感じながら、認知症の方とお話ししようと思います。 まだまだ未熟なアラ4オジサンです。