アラ4オジサンの読書感想文「アルジャーノンに花束を」
その昔、ドラマ化や映画化で話題になった作品ですが、僕は見ていなかったので小説で初めてストーリーを知りました。読むきっかけになったのは、中学校・高校の先生が選ぶ10代におススメの「きみ本フェア」の第一位に選ばれていたからです。僕のようなひねくれたオジサンにおススメかどうかは分かりませんが、25年前にタイムスリップしたつもりで読んでみました。ストーリーは、知的障害を持つ主人公のチャーリー(成人の男性)が脳の手術によって天才になるのですが、その後の「確変タイム」は長く続かず脳は退化してきます。そのチャーリーの行動や心情を「経過報告」というチャーリー自身の日記であらわされています。
チャーリーの手術が成功し、知能が良くなっていくにつれて、障害者に対するいじめや偏見があわらになっていき、チャーリー自身がそれに気付きます。幼い頃の両親の期待や虐待が彼にもたらした性格、知的障害者の性が生々しく描かれています。手術をした博士たちは手術前のチャーリーを「人間ではなかった」かのように扱いますが、手術前の彼も人間であり人権があるという、頭では「分かっている」けれど潜在意識の中で「分かっていない」ことに深く心を揺さぶられます。チャーリーへの同情なのか、自分自身の心の奥底にある差別の意識への軽蔑なのか・・・読めば読むほど悲しくて心が重くなる一冊でした。
中学生におススメと僕は思いませんが、高校生にはいいかもしれません。オジサンの心の奥底にドシンと響く一冊ではありましたが、帯に「泣ける本」と書いてあったのにオジサンには「お涙頂戴ポイント」は見つかりませんでした。でも、海外の小説で「ヘタ」な日本語訳のせいで集中力が途切れることがよくありますが、この本ではほとんどそれを感じなかったのは良かったです。「我こそはひねくれてないぞ!」というオジサマ&オバサマ、是非読んでみて、その素晴らしさを僕に教えてください。